リギヨルと前田長太の著したキリスト教の護教書。
1891(明治24)年、内村鑑三による第一高等中学校「不敬事件」をはじめ、各地の教育現場でキリスト教をめぐる事件が起こると、井上哲次郎は『教育ト宗教ノ衝突』(1893)を著し、キリスト教は日本の「国体」と教育に合わないと主張した。この問題をめぐり「教育宗教衝突論争」ともいえる大論争が生じる。キリスト教側の反論が比較的少ないなかにあって、カトリックの神父リギヨル(François Alfred Désiré Ligneul.1847-1922)および前田長太(1867-1939)による本書は、井上の前掲書をいちいち引用しつつ反論を加えた本格的なもの。刊行年内に発売禁止になったため「前編」のみの刊行にとどまったとみられる。当然、現存している書物は他に知られていない。リギヨルはパリ外国宣教会宣教師として1880年に来日。前田は司祭として活躍したが1916年に慶応大学教授となる。