「かぐや姫、月を見て嘆く」

画面の左上、「すやり霞」の合間に月が描かれ、画面右半分に室内にはかぐや姫をはじめ、姫との別れを嘆く翁と媼が描かれています。かぐや姫の脇には几帳があり、その外側には水墨山水風の襖絵が画中画として描かれています。画面左下には、さらに目を手で押さえる稚児や涙を拭う三人の女房たちが描かれています。袖で涙を拭うしぐさは、かぐや姫・媼・女房たちと共通しており、それぞれが響きあうかのようにも見えます。

すやりがすみとは?

横に展開する長い画面のなかに合理的に連続しない二つ以上の空間を描く絵巻において、その接続を違和感なくするために用いられる手段として、山を中心とした自然景の挿入と、霞の使用が挙げられます。

そうした手法は中国古代の敦煌壁画などにも見られますが、奈良時代に描かれた絵因果経では、孤立した場面の間には山を描いて連続させています。

(参考文献:若杉準治編『絵巻物の鑑賞基礎知識』至文堂、小学館『デジタル大辞泉』)