- 『摂食障害の語り ――〈回復〉の臨床社会学』
- 『分断と対話の社会学――グローバル社会を生きるための想像力』
(中村英代著、新曜社2011年)
他者の経験を聞き、研究していくこと
近年、「摂食障害」という言葉は身近なものになってきたかもしれないが、当事者の経験は思いのほか遠い。本書は、かつて摂食障害に苦しんだ経験のある著者が、「人々は摂食障害からどのように回復しているのか」という問いを明らかにするために回復者へインタビューした研究の成果である。本書を通じて、当事者の語りに寄り添いながら社会を見つめ直す研究の豊かさやそのような研究が見出しうる希望にふれることができる。
(塩原良和著、慶応義塾大学出版会2017年)
ともに暮らす誰かへ思いを馳せるために
「分断社会」と盛んに言われるようになったが、自分は誰と分断されているのだろうか、どのような違いによって分断されているのだろうか。本書は、「分断」と言うことで分かった気になってしまわずに、自分が生きているこの社会やそこで生きているマイノリティを含めた他者を「知ろう」とするためのヒントを与えてくれる。そしてこのことは、他者だけではなく、なによりも自分にとって、この社会を生きやすいものにする一歩のように思う。