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(ジョルジョ・アガンベン著 ; 高桑和巳訳、青土社2021)
コロナ禍の後に、留学に行く前に。
全世界に混乱と変化をもたらしたコロナ禍がようやく終わりを迎えつつある。過去数年間を見返すと、様々な混乱や変化があったことを容易に思い出せるだろうーー例えば、緊急事態宣言やマスク着用の習慣化、リモート化など。時には、日本と海外との”違い”にも気づかされることもあったかもしれない......。本書は、世界的に有名な政治哲学者が、新型コロナ・ウイルスの流行という歴史的な出来事やそれに関連する様々なテーマについて執筆した数々のエッセイを収録している。中には自分とは全く違う発想や視点と思えるものもあるかもしれない。もし海外留学経験とは自分の世界観を広げる経験だといえるとしたら、本書はまさに視野を広げる一助になるだろう。コロナ禍を経て、実際に海外留学に行くという貴重な経験をする前に、この数年間の経験自体を振り返ることや、それに関する観点を広げてみること、あるいは”大学に実際に来る”という基本的なことを見返してみても良いかもしれない。
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(尾崎由博著、総合法令出版2022)
アフターコロナ留学におけるリスク管理
感染症の流行をふまえて執筆された、留学に関する比較的新しい一冊。
このような時代にあえて留学をする意義とは?実際に海外に行ってどう行動すべきなのか?
留学をすることによるメリットなどの心構えと同時に、心身の体調管理を含めたリスク管理について、専門家から具体的なアドバイスが得られます。
留学を決断する決め手が欲しい人、すでに留学を決めている人、どちらにも必携の一冊です!
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(ジョン・アーリ, ヨーナス・ラースン [著] ; 加太宏邦訳、法政大学出版局2014)
留学前の新たなまなざし
留学ということは居住地から離れ、新たな様式を学び、異文化と交流するこという意味から、一種の「観光」である。著者は、観光という一種の行動様式について、近代の社会的慣行としての「観光」、個人心理の問題ではなく社会的にパターン化かつ学習された見方である「まなざし」を合わせた「観光のまなざし」がどのように変遷してきたのかを論じている。新たな交流が期待される留学に行く前に異文化への様々な見方を身につけよう。
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(日高優著、青弓社2009)
写真から海外情勢を思考してみませんか
世界情勢に触れる一つの方法に、報道写真があります。写真は「事実を伝える透明なメディア」と呼ばれることもありますが、果たして本当にそうでしょうか。写真に写っているものだけが事実でしょうか。写真というメディアの本質を考えながら、世界へと目を向けることのできる一冊です。1960-70年代のアメリカを取り上げてはいますが、どの国や時代にも通じていく内容になっています。映像身体学科教授・日高優先生の著書ですよ。
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(エリン・メイヤー著 ; 樋口武志訳、英治出版2015)
留学や他文化との接触に、語学力より不可欠なものとは何か?
グローバル時代に最も求められる能力は、語学力よりも、「異文化理解力」である。留学を通じて「異文化理解力」を身につけるのは留学の目的の一つだろう。留学の前に「異文化理解力とは何か」を知り、それを意識して実践しながら他国で過ごすことで、自分の留学がより有意義なものになると思う。本書は、「カルチャー・マップ」で国文化の相対比較の他に、具体的な実例が沢山挙げられている。理論と実体験の組み合せを用い、文化の違いが生まれやすい「8つのマネジメント領域」に沿って「異文化理解力」をわかりやすく解説している。他者とコミュニケーションを取る上で考慮すべき点、多様性が溢れる今の時代に必要な物事の捉え方や認識の仕方を教えてくれる。本書を読むことで、「異文化理解力」を知り、これからの留学生活に役に立つでしょう。
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『世界を知る101の言葉「単語ひとつ」で国際標準の教養がザックリと身につく』
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(マンディープ・ライ 著 ; 鹿田昌美翻訳、飛鳥新社2021)
世界各国の価値観をザックリと知り、多様性に触れる。
本書は、101か国の価値観を一言の言葉で表現しその理由を解説することで、日本以外の多様な価値観を教えてくれる知的ガイドブックである。本書を通じて、留学先の国の大まかな特徴を掴むことができる。また、地形や気候、民族や宗教、歴史、経済などの面において、それぞれの国はそれぞれの「性格」を持っている。留学以前にこのような多様性を知り、理解しておくことは、これからの留学という「他文化との接触」に役に立つだろう。さらに、それぞれの国を表現する言葉は、著者が自分の知識と150か国以上を旅した体験によって考え出したものである。留学する際に、ぜひ自分の目と心で留学先の国のことをじっくり体験し、著者のように自分なりの「一言の言葉」を考えてみよう。この読書体験は、きっとあなたの異文化にたいする理解を深くし、より有意義な留学生活を過ごすことができるだろう。
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(ブレイディみかこ著、文藝春秋2021)
自分とは「ちがう」誰かとともに生きるための留学
この本は、ライター、コラムニストのブレイディみかこさんが、イギリスでの異文化体験も交えながら「共感」(エンパシー)とは何かという問いについて書いています。コロナ禍の緊張の中で、自分とは異なる他者へ「共感」しながら生きる可能性を考えた本です。コロナ禍の世界では、あからさまな形で人種や階級などによる分断があらわになりました。今の時代の留学は、より一層、多様な人たちと生きることを考える機会になるのかもしれません。この本はその助けになるはずです。
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(斎藤幸平著、KADOKAWA2022)
人と出会い、学び、成長するために
本書は、近年注目を集めている気鋭の研究者、斎藤幸平による「フィールドワーク」を記録したものだ。そこには、普段の生活のなかで私たちがあまり気がつくことのできない「現実」がつづられている。もし、留学に行くということが、自身の視野や見識、世界観を拡げるという経験だと言えるとすれば、本書はそのための導入に最適であろう。著者の斎藤幸平氏は記述するーー「現場で他者と出会い、自らの問題に向き合…うことが、新しい人々とのつながりを生み、新しい価値観を作り出すことに繋がる(p.219.)」。本書を読み終わった頃には、あなたは留学先で様々な人と、実際に話し、触れ合い、価値観を交換し、高め合いたいと思い始めるだろう。留学に行き、様々な経験をする前に本書を手に取ることをお勧めする。
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(アルフレッド・W・クロスビー [著] ; 西村秀一訳、みすず書房2004)
パンデミック「後」の世界とは?
新型コロナウイルスは世界的に流行し「パンデミック」と呼ばれた。しかし、パンデミックは一度限りの現象ではない。1918年のアメリカではインフルエンザが大流行し、医療の逼迫、交通機関や通信機能の麻痺などが生じ、日本も大きな被害を受けた。このように、本書はパンデミックを人間が環境に影響を与え、環境から影響を受けてきた歴史の大きな流れの一つとして捉えている。果たしてパンデミック「後」の世界などあるのだろうか。ただ忘れ去られているだけではないのだろうか。パンデミックの「前」の世界で、次なるパンデミックに備えて何ができるのか。現代の世界が本書から問われていることは多い。
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(河野至恩著、講談社2014)
ローカルな文化を開く方法
アメリカの大学で日本文学を学び、日本の大学で教える著者が、日本文学が世界で読まれるとはどのようなことなのか、「世界文学」という概念を参照しつつ考察している一冊。村上春樹の小説が、異なる文化圏でどのように読まれ、研究の対象とされているのかなど、具体的な事例を挙げつつも一冊を通して「〈正しい〉日本文化を発信」しようという原典主義的発想を相対化し、ローカルな文化を価値観の異なる人々と共有することの可能性を引き出すことに主眼が置かれている。新書の形式で手に取りやすく、気軽に読める文体のため、読書に慣れていない方にもお勧め。
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(日本比較文学会編、彩流社2011)
相対化する視座
日本文学や日本のサブカルチャーがアジア・欧州・英米のそれぞれの言語圏に向けてどのように発信されているのか、またそこでどのように受容されているのかについての論文集です。本書は言語表現を中心に日本文化を扱っている研究書ですが、各言語圏の文化状況と照らし合わせることで日本文化を常に相対化しようとする視座から論じられており、留学を機に改めて日本と海外の文化的関係を考える際におすすめです。