Comparative Civilizations

  1. 『ハイデガー : 世界内存在を生きる』
    高井ゆと里著、講談社 (2022)
    テクスト研究にとどまらない哲学の可能性を私たちに提示してくれる1冊
    本書は、ドイツの哲学者マルティン・ハイデガーの主著『存在と時間』を、「存在」でもなく「時間」でもなく私たちの「生」についての分析が展開されている書物として解釈する研究書であり、この観点からハイデガー哲学のエッセンスを紹介する入門書でもある。『存在と時間』を精緻に読解しつつ、そこに含まれている思想から私たちが生きている現代社会をも眼差すという著者の哲学的姿勢は、『存在と時間』を読解することが即ち現代社会における諸問題に取り組むことでもある、という単なるテクスト研究にとどまらない哲学の可能性を私たちに提示してくれている。
  2. 『デリダ : 脱構築と正義』
    高橋哲哉著、講談社(2015)
    「哲学っておもしろい!」と思わせてくれる格好の「入門」書
    フランスの哲学者であるジャック・デリダの思想のキーワードである「脱構築」。本書は、哲学や文学のみならず様々な分野に影響を与えたこの思想の核にある哲学的モチーフを、デリダ自身のテクストに沿って解説することで、読者に「デリダっておもしろい!」「哲学っておもしろい!」と思わせてくれる格好の「入門」書である。私たちは本書を読み進めていくあいだ、極めてスリリングな哲学的思考を一歩一歩深めていくことをデリダに促され、いつのまにか諸々のテクストをデリダと共に「脱構築」していることに気づくだろう。