英米文学専攻ラーニングアドバイザーのおすすめ本

  1. 『ジーキル博士とハイド氏』
  2. (ロバート・ルイス・スティーヴンソン著(田中西二郎訳)、新潮社1989年
    誰が善で誰が悪なのか。ヴィクトリア朝ゴシックの傑作。
    二重人格の代名詞としてよく知られる「ジキルとハイド」の物語の原作小説。秘密を抱えているのはジキルとハイドだけではない。誰が善で誰が悪なのか。ページを開けばあふれ出す、押しつぶされるような抑圧の気配と濃厚な秘密の香り。霧と秘密と欲望が交錯するゴシック文学の傑作。
  3. 『批評理論入門-『フランケンシュタイン』解剖講義』
  4. (廣野由美子著、中公新書2005年
    文学批評理論の実践入門書
    批評理論、と聞くとつい身構えてしまいがちだが、本書は小説『フランケンシュタイン』に題材を絞って、文学作品の具体的な読み方の実例をわかりやすくまとめた一冊。小説技法篇と批評理論編に分かれており、『フランケンシュタイン』を読んでいなくても理解できる内容となっているが、もちろん作品を読んでいればさらに理解が深まる。文学批評の実践の入門書として最適。
  5. 『十九世紀ロンドン生活の光と影-リージェンシーからディケンズの時代へ』
  6. (松村昌家著、世界思想社2003年
    十九世紀のロンドンに関心がある人におすすめの一冊
    十九世紀のロンドンに関心がある、という人にぜひ読んでほしい一冊。ダンディズム、移民、犯罪、貧困など十九世紀ロンドンを彩る重要な事象がディケンズをはじめとした当時の文学作品とともに、非常にわかりやすくまとめられている。光と影のコントラストが際立つ十九世紀ロンドンについての基礎的かつ重要な知識を得ることができる。
  7. 『写真で見るヴィクトリア朝ロンドンの都市と生活』
  8. (アレックス・ワーナー、トニー・ウィリアムズ著(松尾恭子訳)、原書房2013年
    写真で知るヴィクトリア朝ロンドンの都市生活
    ある時代を知りたいと考えたときに、写真のインパクトというのは絶大である。ヴィクトリア朝を代表する作家チャールズ・ディケンズの作品と人生をなぞりながら、数多くの貴重な写真でヴィクトリア朝ロンドンをたどる本書は、一瞬で読者を当時の人々であふれるロンドンに導いてくれる。
  9. 『図説英国執事-貴族をささえる執事の素顔』新装版『図説英国執事-貴族をささえる執事の素顔』
  10. (村上リコ著、河出書房新社2012年/2019年
    「英国執事」とは何か?
    イギリスの映画やドラマで見るだけでなく、近年日本のポップカルチャーでも大人気の執事。では一体執事とはどのような存在なのか。人気漫画『黒執事』の時代考証も手掛ける著者が膨大な資料を丁寧に読み解き、多くの図版や写真を用いてまとめた「英国執事」本の決定版。これを読めば謎多き影の存在である英国執事について知ることができる。
  11. 『いかにしてアーサー王は日本で受容されサブカルチャー界に君臨したか』
  12. (岡本広毅・小宮真樹子著、みずき書林2019年
    アーサー王伝説はなぜサブカルチャー界で人気なのか?
    アーサー王伝説と聞いて、人気ゲームや漫画、そのキャラクターを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。では、なぜ日本のサブカルチャー界でアーサー王伝説はそんなにも人気があるのか。本書はその疑問に迫る論考をまとめた研究書である。夏目漱石から『Fate』シリーズ、ドラゴンクエスト、カズオ・イシグロまで幅広く扱われた、アーサー王伝説への情熱が詰まった一冊。
  13. 『階級にとりつかれた人びと-英国ミドル・クラスの生活と意見』
  14. (新井潤美著、中公新書2001年
    英国ミドルクラスの階級意識とは?
    イギリスを理解する上で階級は重要なキーワードであるが、イギリス人が持つ階級意識を理解するのは難しい。本書は、英国ミドル・クラスの人々の階級意識を様々なエピソードや作品とともに描き出しており、新書という形式もあり非常に読みやすい。イギリスの階級に興味がある人におすすめの一冊。
  15. 『緋色の研究』(シャーロック・ホームズ・シリーズ)
  16. (コナン・ドイル著(延原謙訳)、新潮社2010年
    ヴィクトリア朝が誇る名探偵と相棒の物語
    コナン・ドイルが生み出した探偵シャーロック・ホームズは現代でも人気のキャラクターである。観察と論理的思考による推理力を誇るホームズが人気なのはもちろんだが、シリーズの魅力はなんといってもホームズの活躍を記録し続ける相棒ワトソンとホームズの関係性だろう。映画やドラマも多く作られているが、「聖典」とも呼ばれる原作には読書の格別な魅力が詰まっている。『緋色の研究』はシリーズ一作目。
  17. 『オリバー・ツイスト』
  18. (チャールズ・ディケンズ(唐戸信嘉訳)、光文社2020年
    小説の面白さが詰まった孤児オリバーの物語
    孤児オリバー・ツイストの数奇な運命を描いた、出版当時から現在まで人気を誇るチャールズ・ディケンズの名作。現在でも映画化、ミュージカル化が繰り返し行われている。個性的なキャラクターと息も尽かせぬ展開で、ぐいぐいと先を読ませる筆力は圧巻。物語の面白さを素直に感じられる一冊。
  19. 『ダブル・ダブル』
  20. (マイケル・リチャードソン編(柴田元幸、菅原克也訳)、白水社1990年
    分身物語の魅力
    本書はタイトルのとおり、編者のマイケル・リチャードソンが二十世紀に書かれた西洋の小説から、「分身」、「双子」、「鏡」などがモチーフの作品を選んだアンソロジーである。分身は時には影として、時には双子の片割れとして、時には人形として、物語に登場し、登場人物だけでなく読む人が持つ境界線も揺さぶる存在となる。分身物語の魅力が詰まった一冊。
  21. 『小説の技巧』
  22. (デイヴィッド・ロッジ著(柴田元幸、斎藤兆史訳)、白水社1997年
    小説の技巧を読み解く
    ジェイン・オースティン、カズオ・イシグロといった作家の小説や物語を題材に、「書き出し」、「作者の介入」、「視点」といった小説の技巧をわかりやすく紐解いていく。構造を知ることで、作品の面白さが深まるのはもちろん、文学研究の入門書としてもおすすめの一冊。
  23. 『図説ヴィクトリア朝の女性と暮らし―ワーキング・クラスの人びと』
  24. (川端有子著、河出書房新社2019年
    ヴィクトリア朝のふつうの女性の暮らしとは?
    写真や資料を豊富に用いて、ヴィクトリア朝のワーキング・クラスのふつうの女性たちの暮らしに迫った一冊。学校や職業、生活や娯楽、思想といった様々な切り口から、当時の女性たちの暮らしぶりを知ることができる。使用されている図版がどれも興味深い。
  25. 『クローヴィス物語』
  26. (サキ著(和爾桃子訳)、白水社2015年
    短編の名手サキの珠玉の物語集
    皮肉とユーモアあふれるサキの短編小説集。軽快な物語に残酷さが溶け合う独特の筆致、その中に時として潜む驚くべき静謐さなど、物語の可能性と面白さを味わうことの出来る一冊。
  27. 『オトラントの城』
  28. (ホレス・ウォルポール著(井出弘之訳)、国書刊行会1983年
    ゴシック文学の元祖
    ゴシック小説の先駆けといえる作品。中世のイタリアを舞台にした本作には、古城に殺人、亡霊、廃墟、暴君といったゴシックの重要な要素が詰め込まれている。出版時はウォルポールの作ではなく、イタリア語で書かれた中世の物語を発見して翻訳したという設定で出版されており、そのあたりもゴシック的である。
  29. 『悪の誘惑』
  30. (ジェイムズ・ホッグ著(高橋和久訳)、国書刊行1980年
    圧倒されるゴシックの名作
    スコットランドの詩人であり作家でもあるジェイムズ・ホッグが18世紀に生み出した驚くべきゴシックの傑作。兄を恨む弟の心理、分身、宗教などを巧みに物語に織り込み、誰にも書けないような独創的な物語に仕立て上げた。
  31. 『ドラキュラの世紀末:ヴィクトリア朝外国恐怖症の文化研究』
  32. (丹治 愛著、東京大学出版会1997年
    『ドラキュラ』の書かれた背景に迫る優れた文化研究の書
    ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』が当時のイギリスの社会や文化を反映した外国人恐怖症の物語であることを解明する刺激的で明快な書。出版当時の背景に鋭く迫る本書はスリリングでありながら読みやすく、文化研究のお手本としても最適である。
  33. 『ロード・ジム』
  34. (ジョゼフ・コンラッド著(柴田元幸訳)、河出書房新社2011年
    「英雄」ジムの物語
    語り手マーロウの目線から描く、ロード・ジムの物語。一等航海士のジムは、悲劇に巻き込まれ、自分でもわからぬままに一つの決断をしてしまう。果たして、ジムの判断は間違っていたのか。自身も船乗りであったコンラッドが描く海洋小説の名作。
  35. 『ヴィレット』
  36. (シャーロット・ブロンテ著(青山誠子訳)、白水社2019年
    『ジェーン・エア』作者の隠れた名作
    ブロンテ姉妹の一人、シャーロット・ブロンテの代表作といえば、映画化されることも多い『ジェーン・エア』だが、彼女の隠れた名作が『ヴィレット』である。主人公ルーシー・スノウの過度に抑制された語りが、彼女の心に潜む葛藤や孤独を浮き彫りにする。ルーシーの心の機微を丁寧に描いており、少女漫画や少女小説の原点ともいえるような作品。
  37. 『女だけの町:クランフォード』
  38. (エリザベス・ギャスケル著(小池滋訳)、白水社2019年
    優しくて、おかしくて、切ないふつうの人々の物語
    都会から離れた、年配の女性が多く住む小さな町クランフォード。一見退屈そうに見えるその町に住む、ふつうの人々の暮らしを、人々の日常に潜む心の機微を、丁寧に掬い取って描いた佳作。滑稽で、優しくて、少し切ない彼女たちの姿に、笑って、泣いて、心があたたかくなる一冊。
  39. ゴシック小説をよむ
  40. (小池 滋著、岩波書店1999年
    ゴシック小説をよむ最高の手引き
    膨大な知識とわかりやすい語り口で、なぜゴシック小説が誕生したのかという経緯から、その後の流行、後世への影響に至るまでを情熱を持って綴った一冊。読者をあっという間にゴシックの魅惑の世界に連れて行ってしまう。今すぐにゴシック小説が読みたくなる名著。