社会契約論

 

社会契約論 タイトル(仏) Principes du droit politique
タイトル(日) 社会契約論
責任表示 J.J. Rousseau
著者名典拠 Rousseau, Jean-Jacques
出版年 [1762]
出版地 Amsterdam
出版者 Marc Michel
言語 フランス語
ページ数 viii, 323 p.
大きさ 20.5cm
装丁 洋装
請求記号 NDC:311||R 76
注記  
PDF(全文) 社会契約論:第1・2部 第3部 第4部 
立教OPAC登録番号 52252722

 

解 説


 ロールズという哲学者は『社会契約論』について、政治哲学領域における「フランス語で書かれた最高の著作」だと述べています。少しばかり大げさな表現だと思う方もいらっしゃるかもしれません。ですが、この作品の重要性を言い表すには、これでもまだ十分ではないのです。戦後の日本ではある時期、ルソーは「近代の父」として党派的称揚の対象になったことがありました。「近代の父」というあいまいな表現はさすがに用いられなくなりましたが、それでもこの表現はある本質を言い当てています。
 『社会契約論』と共に「近代」といわれる新たな時代が到来したのです。
 一言でいえば、それは、自分たちが、自分たちのために、自分たち自身で「法」を与え、それに共同の権威を付与するという政治システムが自明となった時代のことです。人民主権といわれる、わたしたちに馴染み深い政治状況は、ルソーが理論化してみせたものに他なりません。
 ところで、わたしたちが日々経験しているように、自明であるはずの人民主権という状況は、なかなか、あるべき姿を取って現れてきません。人民主権というのは、厳密な意味で、実現してみせるのが極めて困難なものなのです。どうやらルソーはその困難を十分に意識していたようです。ですから、その意味でもルソーは「近代」、あるいはその先のことまで考えていたといえるのかもしれません。実際、政治の「現在」や「未来」について考察するさい、ルソーは今でも絶えず参照されているのです。
 それだけ重要な理論が展開された書物はさぞかし長大なものだと思うかもしれません。ところが『社会契約論』は実にコンパクトな作品で、ルソーが好んだ脱線や展開はほとんどありません。
 それゆえ、ほとんど「謎解き」のように、この小さな書物をめぐって無数の書物が書かれてきました。ルソー以降の政治哲学の歴史は、ルソーが『社会契約論』で提示した困難な問い(アポリア)に対する応答の歴史だといわれることがあるほどです。(桑瀬 章二郎・本学教授)