告 白(全4巻)
タイトル(仏) | Les confessions de J.J. Rousseau ; suivies des Rêveries du promeneur solitaire [t1,t2]
Second partie des confessions de J.J. Rousseau [t3,t4] |
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タイトル(日) | 告白 | |
責任表示 | J.J. Rousseau | |
著者名典拠 | Rousseau, Jean-Jacques | |
出版年 | 1782-1789 | |
出版地 | Geneve | |
出版者 | [s.n.] | |
言語 | フランス語 | |
ページ数 | ||
大きさ | 17cm | |
装丁 | 洋装 | |
請求記号 | NDC: 135.34||R 76||1-4 |
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注記 | ・告白1 ・告白2 |
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PDF(全文) | t1 : |
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立教OPAC登録番号 | ・t1:52276465、t2:52276466 ・t3:52276467、t4:52276468 |
解 説
『告白』には、自らの卑劣な行為についての記述や、性についての大胆な分析、捨て子事件と呼ばれる有名な出来事の詳細、友人の知識人たちと次々と決裂していく過程についての叙述など、ルソーにとってあまり名誉とならないような記述がたくさん含まれています。ルソーには、生前からたくさんの論敵・中傷者がいましたが、『告白』を書くことによって、自ら恰好の攻撃材料を提供することになったわけです。
長いルソー受容史をひもとけば、ルソーの私生活の諸問題を通して彼の思想を攻撃するという手法が、最も不毛な、つまり最も知的レベルの低い読解であることが理解されます。
では、そのような皮相な批判を十分予想できたにも関わらず、ルソーはどうしてありのままの自分を語るという、文学史上例をみない試みを実践したのでしょうか。
一言でいうと、それは「わたし」という謎を解明しようとしたからでした。
「わたし」とはいったい何か。これは『ルソー、ジャン=ジャックを裁く――対話』、『孤独な散歩者の夢想』へと続くルソーの自伝的著作を通底する問いです(実はこれは西欧哲学の難問でもありました)。
「わたし」という謎を解くには、「わたし」の歴史を詳細にたどらなければならない。そこから、ルソーの大胆な「方法」が説明されます。たとえば、ルソーは、当時の礼節に反し、自分の性の歴史を詳細に語ってしまいます。また、読者の眼には知る必要がないとうつる事柄までも、すべて語ってしまいます(一見「わたし」を知るために無意味なものとみえる出来事や、何も起こらない日常生活の反復のなかにこそ、「わたし」の謎を解く鍵があるのではないか――ルソーはそう考えたのでした)。
『告白』はまた、自己変容の過程を描き出します。自分がさまざまな経験や出会いを通し、いかに「教養」と「文化」を身につけ、当時ヨーロッパで最も有名な知識人となったか。その過程を、時に弁証法的といえるような手法で描くのです。
こうして生まれた『告白』は、近代的自伝というジャンルを創始しただけでなく、同時に完成してしまったともいわれています。(桑瀬 章二郎・本学教授)