社会学専攻ラーニングアドバイザー②のおすすめ本

  1. 『公共性の喪失』
  2. (リチャード・セネット著、北山克彦・高階悟訳、晶文社1991年
    「親密性による社会」の到来
    現代の「公共性」を考えるための一冊。歴史の中にあった公的領域が後退し、個人や家族といった私的領域が拡大しているとする。つまり、政治、都市、メディア、消費などあらゆる領域の問題は個人にとってどれだけ親密かによって考えられるようになっているという。ヨーロッパ諸国の歴史的な記述が豊富で、社会の変遷などに興味がある人にもお勧め。
  3. 『社会科学における人間』
  4. (大塚久雄著、岩波新書1977年
    ウェーバー、マルクスに関する入門書
    約40年前の本だが、社会学でも重要な古典であるウェーバー、マルクスの議論を「合理的行為主体としての人間類型」という観点からわかりやすく解説。また、社会科学(社会学、経済学、心理学、文化人類学など)の既存理論の相対化・より詳細な検討を可能にする「人間類型論」についても、その入り口を示している。NHK大学講座での連続講義を元にしており、文章が軽快で非常に読みやすい。学部1年生に特にお勧め。
  5. 『社会はなぜ左と右にわかれるのか』
  6. (ジョナサン・ハイト著、高橋洋訳、紀伊国屋書店2014年
    「パヨク」、「ネトウヨ」双方を理解するために
    人間の道徳的判断が合理的な思考ではなく直感によるものであり、道徳基盤が深く関係しているとする本。道徳基盤には、「ケア/危害」「公正/欺瞞」「忠誠/背信」「権威/転覆」「神聖/堕落」「自由/抑圧」の6つのベクトルがあり、それぞれの強弱パターンによる「道徳マトリックス」が生じる。本書では、こうした「道徳マトリックス」が、社会における保守とリベラルの対立を理解するためにも非常に役立つことをアメリカ社会を例に示している。異なる政治的意見を持つ人々をどのように理解するか、また自身の考え方を相対化する上でも、画期的な視点を提供してくれる。
  7. 『閉じこもるインターネット : グーグル・パーソナライズ・民主主義』
  8. (イーライ・パリサー著、井口耕二訳、早川書房2012年
    ネット研究をする上で無視できない本
    計算機能やアルゴリズムの発展に伴い、協調フィルタリング、パーソナライゼーションが進むインターネット。私たちが利用するインターネットは、オープンで自由な空間ではなく、個人の嗜好に沿った情報宇宙「フィルターバブル」にあるという。インターネットコミュニケーション研究、情報行動研究等を考えている学生にお勧め。
  9. 『幻影(イメジ)の時代 : マスコミが製造する事実』
  10. (ダニエル.J・ブーアスティン著、後藤和彦・星野郁美訳、東京創元社1964年
    大衆文化批判に関する良書
    私たちが今日経験する多くの「出来事」は合成的に作り上げられたものであり、その領域はニュース、観光、有名人、広告、政治、etc…多岐に渡る。こうした私たち大衆の期待に応えるためにマスメディアによって製造される幻影(イメジ)を、私たちは現実として享受している。マスメディアが主流の時代、アメリカの大衆文化について鋭く指摘した古典。メディア環境が多様になった現在の状況も踏まえて読んでみるのもおすすめ。
  11. 『ハマータウンの野郎ども』
  12. (ポール・ウィリス著、熊沢誠・山田潤訳、筑摩書房1996年
    反学校文化と階級社会の意外なつながり
    1970年代のイギリス、仮称ハマータウン。その労働者階級の不良学生たち=〈野郎ども〉が持つ独自の反学校の文化にスポットライトを当てる。そこには、現実を見抜きながらも、将来彼らが自己転落ともとれる形で労働者階級になることを選び取り、社会的再生産を助長する仕組みがあった。分析はマルクス主義的な色合いが濃いが、フィールドワークから特定の文化と社会の関わりを明らかにした名著。