(1)平安京内裏(だいり)の正殿。女官を左右に従えた天皇が立っている。その右には摂政らしき人物が座っている。赤い狩衣姿の者たちが鳳輦(ほうれん、金銅の鳳凰を付けた輿)をかついで迎えに来た場面である。
(2)建礼門。衛門府(えもんふ、皇居諸門の護衛を司る役所)の守備所。右手には右衛門督(うえもんのかみ)以下がたむろしている。左手、門前の騎馬の群れは左衛門督(さえもんのかみ)の一行。前陣に加わるべく、五位以上が馬にまたがっている。
(3)馬に乗った束帯姿の若い武官が左衛門督で、陣の指揮を取っている。大きな樹の下では、銀面をあて赤い馬具で飾り立てて威儀を尽くした馬を進めている。
(4)待賢門(たいけんもん、平安京大内裏の外郭十二門のひとつ)前の大宮大路。
(5)門の袖から女がこわごわのぞいている。馬の蹄を避けて門に這い上がる男もいる。
(6)朝覲行幸を物見する群集。袖に菱格子を付けた紋車(もんぐるま)、その後の車は八葉の紋を付けた車、行幸を一目みようとしている。
(7)突然疾走してきた2輌の車。1台の物見から若い公卿の顔が見える。家の中では一献酌み交わしながら、行列を見送る人々が浮かれている。
(8)行列の後陣と群集。
(9)大路に面する家々では、いずれも門松を立て、老若男女が行列を見送っている。
(10)朝覲行幸を今や遅しと待ち構える法皇の御所の光景。中庭の池には朱塗りの橋が架けてある。
(11)裾を長く引いた束帯姿の者は、主上の到着を法皇に奏上してもどるところ。庭には老木の梅が咲き始めている。
(12)鳳輦が後白河上皇の法住寺殿に到着して西門にいましも鳳輦が入ろうとしている場面。
(13)門の外には鳳輦を囲んで、すでに馬を下りた近衛の次将以下の面々が描かれる。後に公卿たちが下部を伴って参入を急ぐ。
(14)法住寺殿前の雑踏のなか行列を解く。
(15)夜の松明と長柄の立ち傘を重たげにかつぐ者、板橋を隔てた川原には老若男女の一群も見える。
(16)舞御覧(まいごらん)。中央の東中門の手前、池の上に釣殿が突き出している。右手に警護の武官や院御所の女房・子供たちが、舞楽を見るために詰めかけている。寝殿の東端には簾の下から女房装束が見える。
(17)右手に赤地の上着をつけ、鳥皮靴をはいているのは、雅楽のひとつ、抜頭(ばとう)の舞。左手に黒漆の桴(ばち)をかざしている。寝殿には摂政以下公卿たちが居並び、裾を高欄の上に垂らしている。寝殿の右手奥深くには御座がみえる。