立教大学蔵「竹取物語絵巻」と「竹取物語貼交(はりまぜ)屏風」について

竹取物語絵巻デジタルライブラリ

 『竹取物語』は九世紀から十世紀にかけて成立した、日本の平安王朝物語では現存最古の作品です。かぐや姫が竹のなかから生まれ、月へと昇天していく――ロマンティックな筋書きを持つこのファンタジーは、後世の人々にも大いに好まれました。かぐや姫のイメージは『源氏物語』をはじめとする王朝物語に大きな影響を与えたばかりか、近代・現代小説の女性像にも反復されるとともに、今日ではTVコマーシャルなどにもしばしば登場するといった具合です。

 かぐや姫のイメージが拡大し膨張していくには、『竹取物語』の絵画化が少なからず関与したと見られます。『竹取物語』の絵について、早くは『源氏物語』のなかで言及されていました。物語を絵にして楽しむことは、平安時代の宮廷社会においてすでに行われていたわけです。ただ、『伊勢物語』や『源氏物語』の絵の現存数の多さに比べると、『竹取物語』の絵の現存数は思いのほか少ないと言えます。『伊勢物語』『源氏物語』の絵の古い作例は鎌倉・室町から見られるのに対して、『竹取物語』の絵で今日残っているのは江戸時代以降の絵が中心です。それは写本においても同様で、『竹取物語』の写本はほぼ江戸時代のものに限られています(本絵巻も物語本文を詞書として全文載せています)。かぐや姫のイメージの広がりとは裏腹に、『竹取物語』の現存する写本や絵画作例の時期が下ること、その数も限られていることは、古典享受史の一つの謎と言えましょう。立教大学蔵の「竹取物語絵巻」「竹取物語貼交屏風」も江戸時代(中前)の作と見られます。いずれも貴重な価値を有するのは、現存する絵巻の数が30点足らずであることや、屏風の形での「竹取物語絵」が希少であることからも明らかです。

 「竹取物語貼交屏風」の絵は、絵入り写本の絵を貼り付けたと見られます。絵入り写本の『竹取物語』は、絵入り版本『竹取物語』の刊行と密接に関わるものと考えられます。いっぽう「竹取物語絵巻」もまた、絵入り写本や絵入り版本との相関を見る必要があります。絵入り写本・絵入り版本、そして絵巻といった形で、かぐや姫の美しくも哀しい物語のイメージは人々の心に浸透していったのでしょう。立教大学蔵の「竹取物語絵巻」「竹取物語貼交屏風」はともに個性的な描写をも含みつつ、この美しいファンタジーの魅力をあますところなく伝えてやみません。

 

竹取物語貼交屏風

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