1.学術的な本の読み方

「学術的な文章」を読む

 大学に入るとレジュメ(研究の要約、発表内容の報告)やレポートなどを作成する機会に多く出会います。その際にはたくさんの文献を調べ、読むことになりますが、それらの大半は、「問い‐論証‐主張‐結論」という形式に則って書かれた学術的な文章です。読み手はこの形式に従い、きちんと内容の理解を進めていかなくてはなりません。ここでは学術的な文章を読むためのポイントを紹介します。

「目次」から全体を読む

 「目次」は、書き手の思考のプロセスを教えてくれます。もともと学術的な文章は、「問い」を小さく分解し、調査を通して「主張」していくプロセスによって成立しています。それは読み手にとっても、書き手がどのように「問い」を分解し、「論証」していったかを示す設計図となるのです。また「目次」は全体のエッセンスとなっていることもあり、今後の内容を教えてくれる道しるべの役目を果たします。「目次」がない場合は、「はじめに」などの序章がその代わりをしています。これらを通じて、読み手は素早く文章全体の骨組みと要約を知ることができます。

「接続表現」からキーセンテンスを見つける: 書き手のモノの見方を知る

 学術的な文章は、パラグラフという「意味のまとまり」によって構成されています。パラグラフには必ず1つのキーセンテンスがあり、それを複数のサブセンテンスが支える形で出来上がっています。そしてキーセンテンス同士のつながりが文章全体の骨組みを作ります。
 まず最初に大切なのは、接続表現に気をつけることです。接続表現はこのキーセンテンスを見つけ出すための目印です。書き手はそれを用いて、文章を論理的に組み立てるとともに、自らの考えを明確化させるための方向付けをします。特に理由や結論の関係を表す接続詞には、それに続く文章の中に書き手の考えが含まれている場合が多いため、読み手にとっても接続表現に注意することは、パラグラフ内の書き手の主張(=キーセンテンス)を探り当てるのに有効です。
 次に大切な点が、パラグラフ間のキーセンテンスの関係です。接続表現が消えてしまうこともありますが、読み手は、キーセンテンス同士の接続を補うことで、意識的にその論理性を見つけ出すように心がけましょう。そうやってパラグラフ同士の関係に目を向けることで、文章全体の構成と内容を理解することができます。

書き手に対し「批判的な視点」に立つ: 問題点の発見

 文章全体の内容を理解できたら、次は批判的に読み直してみましょう。重要なポイントは、「問い」と「主張」を結びつける論証のプロセスです。書き手は誤解や知識不足から、ある特殊な事例を一般化し、「主張」しているかもしれません。そのため読み手は、書き手の持ち出す「論証」の妥当性を検証しなくてはなりません。それは、書き手に対し批判的な視点に立って考えてみなくてはならないということです。
 基本的なスタンスとしては、根拠の信憑性、実例の特殊性、推論の誤りなどを点検します。特に書き手の「主張」の根拠とされている事実の扱いに注意してみましょう。もし限定的な事実であれば、書き手がそれをどこまで考慮しているのかを問い直すことが大切です。こうした批判的な視点を身につけるためにも、同じ主題を扱った他の文章や異なる考えを知ることは非常に重要です。それらを比較しつつ、手元にある文章の意義と限界を理解することが、読書の発展的な目的でもあります。

終わりに

 学術的な文章とは「問い-論証-主張-結論」を形式化した文章ですから、読み手がその形式をきちんと押さえておくことは、書き手の主張を正しく理解していくことにつながります。
 それはまた、読み手が書き手と同じ前提に立ち、より発展的な議論や意見を生み出す土台にもなります。それゆえ、学術的な文章を批判的に読む力を養うことは、私たちが論文やレポートを書く際のテーマ設定へのステップにもつながります。

参考文献

さらに発展的な技術や方法を学びたい方には、下記の文献をおすすめします。

  • 立教大学 大学教育開発・支援センター. “Master of Writing(リーフレット)”. 大学教育開発・支援センター. http://www.rikkyo.ac.jp/aboutus/philosophy/activism/CDSHE/journal/leaflet/, (参照 2016-2-26).
  • アドラー, M. J.; ドーレン, C. V. 本を読む本. 外山滋比古, 槇未知子訳. 講談社, 1997, 265p., (講談社学術文庫, 1299).
  • 野矢茂樹. 論理トレーニング101題. 産業図書, 2001, 182p.
  • 福澤一吉. 文章を論理で読み解くためのクリティカル・リーディング. NHK出版, 2012, 265p., (NHK出版新書, 377).
  • 戸田山和久. 論文の教室 : レポートから卒論まで. 新版, NHK出版, 2012, 313p., (NHKブックス,1194).
  • 三浦俊彦. 論理学入門 : 推論のセンスとテクニックのために. 日本放送出版協会, 2000, 250p.,(NHKブックス, 895).
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