小嶋旧蔵「竹取物語」コレクション寄贈にあたって(小嶋菜温子)


絵入り写本「竹とり」丙本

 本コレクションは、2017年3月をもって立教大学を退職するにあたり、わたくし(小嶋)が16年間の在職中に蒐集したささやかな架蔵本を立教大学図書館に寄贈したものの一部である。小嶋旧蔵本(計十点)の内訳は、 絵巻(二点)・絵入り写本(四点)・絵入り版本(四点)である。

 その中心は『竹取物語』の絵画資料であり、このうち特に稀少と思われる、絵巻(三巻本)・絵入り写本(甲本・乙本・丙本)の計四点を、ここにデジタル化することとなった。

 絵巻一点(「竹とり物語」)は伝徳川斉昭旧蔵で、箱には「後楽園」の印がある逸品である(絵巻自体はいわゆる奈良絵本風の仕立てで、徳川の注文制作にかかるものではなく、献上本の類かと思われる)。

 絵入り写本『竹とり物語』甲本・乙本・丙本は優品である。『竹取物語』の絵入り写本の現存遺品も多くはないが、現在までに三十数例が国内外で確認されている。それらと比しても、本コレクションの甲本・乙本は質の高さが認められる。また丙本も異色の趣きにおいて目を惹く。今後の研究が俟たれるところであるが、以下も参照されたい。

『竹取物語』の絵巻・絵入り写本・絵入り版本等についての近年の伝本情報については、
曽根誠一氏による次の論考が有益である。

なお、本コレクションと関連するものとして、立教大学図書館の貴重書庫には、「竹取物語絵巻」(デジタル・ライブラリ参照)をはじめ、「竹取物語 貼交屏風」、古活字版の古活字十行甲本(第一種本)等の稀覯本が蒐集されている。これまでにさまざまに研究支援を賜った、立教大学および立教大学図書館各位に深甚より感謝申し上げつつ、図書館のますますの発展を祈念申し上げたい。
(2017年12月 小嶋菜温子:本学名誉教授)